2011年3月24日木曜日

アスタラビスタ

今日
相変わらずの余震である。
国内観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した、
東日本大震災の予震を僕が感知した日の事は、
記憶に新しく。
僕はその日に東京のボロアパートの一室に居た。
長い予震。
小さな揺れ。
しかし僕の居るボロアパートは、
あまりにもセンシティブな、その予震に反応し、
僕にその天災の兆しを予告する。

今になって思えば毎年毎年屋根裏を昼夜ともなく駆けずり回り、
僕の食料を貪り食う迷惑な同居人、
否、人間ではないので、この場合はどうなのだろう?
同居物?
ともかく数年を共に過ごしていたミッキーマウスとミニーマウスが、
今年の夏あたりから、
いや年をまたいでいるので、去年か。
まあ近頃は、
影も形も見せなくなった理由を知る事になった。
改めて野生動物の勘の鋭さに敬意を表しつつ、
その無事を祈る。

ともかく予震の時点で
僕は暖房器具の電源を落とし、
ガス栓を捻り、
エレキギターを抱えて、
トイレの中に避難した。
最後の瞬間を迎えるのが和式便所の前だとしたら、
サマにならないな。
と思いつつも、
否、
思ったというより、恥ずかしながら声に漏らしていた。
地震は予震を過ぎ大地震となっていた。
しがみついた便器のパイプが
ありえないくらいに軋む。
折れちゃうよ、これマジやばいって。
そこで
これまでの人生をふりかえり、
案外トイレで事切れるくらいのショボさが自分にはお似合いなのではないか?
なんて思ったものである。

あれから
何回も何回も何日も何日も余震を経験している。
最初のうちは柱四つの鉄壁要塞アバオアクー、
和式にしてジオン最後の砦に、
最終兵器であるテレキャスターを抱えて身を隠す僕であったが、
そのうちに、
どうせ死ぬなら天を仰ぎながらさ。
などと格好良さそうで実はチュウニ的な言葉と共に外に飛び出して行くようになった。

しかし
そんな行為にも飽きた。
携帯の緊急速報にも飽きた。
きっと危機管理能力が低いのだ。
慣れというのは恐ろしい。
すっかり慣れて余震が来ても、微動だにしない中年の鈍感な男がそこに、
すっかり出来上がっていた。
なんの魅力もない。
まあいい。

ミッキーとミニーは今ごろどうしているだろうか?
まあ達者で暮らせよ。
ふたりなら楽しくやって行けるさ。
一人より二人、三人目はお邪魔虫。
お前達との静かで賑やかな思い出は悪くないよ。
ビニールの上から齧られた『カツオのふりかけ』は流石に気持ち悪くて捨てたがな。
地震が落ち着いて、穏やかな日常がもどって、
また会えるのを心待ちにする。
迷惑がって悪かったな。
アスタラビスタ!